細い木は間伐で他の木より太くなる?
間伐による成長の促進について
(岐阜県森林研究所) 大洞 智宏
針葉樹人工林には、生えている木の太さが、そろっているという印象があるのではないでしょうか。しかし、実際に測ってみると、同じような太さの木しかないように見える林でも、太さの異なる木が同居していることがわかります。
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太さが違うということは成長が違うということが考えられます。では、同じ林の中にある細い木と太い木では、成長がどのように違うのでしょうか。また、間伐の時に細い木を残しておいた場合、細い木が大径木になったり、ほかの木よりも太くなることはあるのでしょうか。
スギの林で立木が、5年間でどれだけ太くなるのか、測ってみました。太さと成長の関係を検討するため、5年前の直径と5年間の直径成長量の関係を図にしました(図1)。5年前の直径が大きかった木ほど成長量も大きくなるという関係がみられました。
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ではなぜ、太い木ほど成長量が大きいのでしょうか。同じ林の中では、太い木ほど樹高が高い傾向があります。一方で、枝下高(枝葉のついていない幹の部分の長さ)は、太さに関係なくほぼ一定になるため、樹高の高い木ほど、枝葉のついている部分が長く、たくさんの葉を持っていることになります(図2)。枝葉がたくさんあれば光合成量が多くなり太くなりやすいと考えられます。
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では、間伐を行うことによって、直径の成長はどのように変化するのでしょうか。25年生のスギの林に、間伐をする場所と、しない場所を設定し、その後5年間の直径成長量の関係を検討しました(図3)。間伐をした林、無間伐の林ともに5年前の直径が大きいほど直径成長量が大きくなる関係がみられました。また、間伐をした林では、間伐をしていない林に比べて成長量が大きくなっていました
例えば、直径が20cmだった木は、無間伐の林では、約2cm太くなったのに対して間伐を行った林では、約3cm太くなりました。しかし、間伐によって成長が促進される量は、細い木も太い木もほとんど変わらず、相対的に細い木は、やはり細いままでした。
細い木でも、長い時間をかければ太くなることは可能かもしれませんが、太い木と太さが逆転するのは難しいようです。
これまで、間伐に関する様々な研究が行われてきました。しかし、間伐によって一本一本の木が、どの程度太くなるかといったことに関しての研究事例は意外に少なく、間伐の方法によっては、今回紹介した結果とは異なる成長をする可能性もあります。将来どんな林になるのか、正確に予想できるようにするためにも、今後も様々な林で木がどのように成長していくか観察を続けたいと思います。
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