エネルギー源の構成を主要国(日本、米国、フランス、ドイツ、イタリア、英国、スウェーデン、韓国、中国)で比較した図を掲げた。(日本のエネルギー源の長期推移については図録4000参照)。
石油、石炭など加工されない状態で供給されるエネルギーを1次エネルギーと呼び、電気、都市ガス、コークスなど1次エネルギーを加工してつくられたものを2次エネルギーと呼ぶ。
1次供給エネルギーのエネルギー源の構成で日本が目立っているのは、以下の点である。
@低まったとはいえ、石油依存度が、イタリア、韓国と並んで高い(日本が最も高い)。
A天然ガスの比率が比較的小さい。
B原子力の比率が、フランス、スウェーデン、韓� �に次いで高い。
発電源の構成で日本が目立っているのは、以下の点である。
@フランスでは原子力が77.1%と非常に大きく、中国は石炭が78.9%、米国やドイツでも石炭が半分近く、といった片寄りが見られるのに対して、日本は、様々な発電源を組み合わせた構成になっている。
A天然ガスは1次供給エネルギー構成よりも、発電源としての方が大きい。
B原子力の比率が、フランス、スウェーデン、韓国に次いで高い。
2.期待が高まる天然ガス利用
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日本の天然ガスは、1次供給エネルギーとしてよりも、発電源としての方が大きい。これは、ガスパイプライン網がはりめぐらされた欧米と異なり、日本ではガスパイプラインが未整備であり、内陸部では、天然ガスが利用しにくいのに対して、大規模発電所や都市ガスの大容量管は、港の近くに立地しており、もっぱらLNG(液化天然ガス)船で輸入される天然ガスを発電所では利用しやすいからである。海洋国家としての日本の特徴があらわれているといえよう。
日本が依存している中東石油と異なり、天然ガスの供給国はロシア、アジアにも分散しており、エネルギーの安定供給の観点から従来から天然ガスへの期待は高まっていた(シェー� ��ガスの採掘技術の開発によりさらに大きな天然ガス埋蔵量が見込まれている点については図録4118参照)。
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さらに、京都議定書が発効し、地球温暖化対策のためのCO2削減が迫られる中、CO2削減に効果のある天然ガス利用の促進が求められている。というのも、天然ガスは、同じ熱量を得るためのCO2排出量が他の化石燃料に比して少ないため、また、エネルギーの需要と供給の場所が一体化しているコージェネレーション(発電とその副産物である排熱の利用を同時に行うシステム)や燃料電池との適性が良く、こうした小規模分散型電源の普及によって総合的なエネルギー効率を高めることが出来るためである。発電効率は大規模な発電所の方が小規模分散型電源より勝っているが、発電所での排熱を家庭で利用するのは難しく、ま� �送電ロスもあるので、これらを差し引きすると小規模分散型電源の方がエネルギー効率が高くなるのである。
東関東大震災に伴う福島第一原発の事故で、原発に代替するエネルギーとして、にわかに太陽光など再生可能エネルギーに期待が集まるようになっているが、一時期注目された水素社会や燃料電池への期待が高まらないのは謎である(菅内閣の不見識?)。またカナダほか世界各地で非在来型天然ガス資源であるシェール(頁岩)ガスが注目を集めており、東京ガスなどもLNG確保のためにその開発に参加している。そうであれば、何故、わが国沿海に眠るメタンハイドレートの開発にどうして注目が集まらないのであろうか。大規模集権的なエネルギーシステムを温存したい勢力により、現政権が、もともと急拡大には課� �が多い再生可能エネルギーに誘導されているのでなければ幸いである。
3.国土幹線ガスパイプライン構想
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天然ガスへの期待が高まるにつれ、、一部で、サハリンの天然ガスを日本までパイプラインで輸送し、日本国内にも幹線ガスパイプラインを敷設し、日本全土に大小のガス管で供給しようとする国土幹線ガスパイプラインの構想が検討されていた。蛇口をひねるとサハリンのガスが出てくるというイメージや水素社会への第2のエネルギー革命が促進されるという展望から、技術者マインドをもつ者にとっては極めて魅力的な構想であった。しかし、経済効率、安全性、フレキシビリティの3点から、代替手段との得失を充分に検討する必要があると考えられる。
ここで代替手段とは、LNG船によるピストン輸送である。果たして、パイプライン網の設� �投資コストとLNG船・LNG基地の建造・建設コスト、及び両者の維持コスト、地震等の災害やテロに係る両者の安全性維持コスト(又は保険料)を比較して、どちらが有利であるかの計算はされなかったようである。
さらにサハリンの天然ガスが永続的なエネルギー源かを充分検討する必要がある。例えば、ロシアとの関係悪化により他の国からの天然ガス調達が必要になったり、春暁、天外天などで中国との係争が生じている東シナ海のガス田の開発が進んだり、日本沿岸のメタンハイドレードの利用可能性が現実化すると、少なくともサハリンから日本までのパイプライン敷設はムダになる可能性がある。その点、LNG船は、別の国からの調達も可能であろうし、耐久年月もせいぜい15年であろうから、新しいエネル� �ーが開発されても余りムダにならない。
上で見たように、日本のエネルギー源は海洋国家としての特徴を有している。水素社会へ向かう将来についても、パイプライン輸送は大陸国家では合理的であっても、海洋国家にとっては余り有利な選択ではないのではないか、という疑念が消えないのである。もっとも、幹線パイプライン輸送網が、日中韓・北朝鮮・ロシアとの間に張りめぐらされて、相互に喧嘩できなくなり、東アジア地域の安定につながるというメリットを追求できるとするならば、話は別である(米国がこの観点からアジア・パイプライン網を推奨しているようでもある)。
天然ガス・LNGの輸出入・輸送手段については図録4120参照。
4.データ年次について
2005年にこの図録を収録してから20 11年5月の更新まで、長く2001年のデータを掲げていた。これは、当時最新の2003年データが原発の設備利用率の急落に大きく影響されており、国際比較には向かないと考えたからである(2002年8月東京電力の自主点検検査記録の不正記載が発覚し、2003年4月には東京電力所有のすべての原子力発電所が運転停止状態になった)。
ところが、その後の設備利用率も長く低迷を続け(上図参照)、そして、2011年3月には原発事故が勃発した。日本の原発の設備利用率が安定的な高水準、あるいは他国並の水準を維持することは期待できない情勢となった。そこで現在得られる最新の2008年データを掲げることとしたのである。2008年データは原発の設備稼働率が6割以下の実績であり、それだけエネルギー供給や発電にしめる日本の原子力のシェアが低めに出ていることに留意して図録を見ていただきたい。
(2005年10月3日収録、10月6日修正、2011年5月30日更新)
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